日本創世の秘密「古代神話と歴史の真実を解き明かす」

日本創世の秘密「古代神話と歴史の真実を解き明かす」
序文
遥か太古の昔、日本の大地はまだ形をなさず、混沌の海に覆われていました。そこに、天と地を創造する神々が現れ、この国の基盤を築いていきました。
日本神話は、単なる伝説ではなく、「日本という国の始まり」を語る壮大な物語です。神々がこの地を創り、争い、和解し、国を譲り、そして人間へとその意志を託していく。この流れは、現在の日本にも脈々と受け継がれています。
本書『日本創世の秘密』では、日本神話の原点に立ち返り、古代の神々が築いたこの国の物語を、わかりやすく、そして臨場感あふれる形で描き直しました。
イザナギとイザナミが大地を生み出し、天照大神と須佐之男命が高天原で運命を分かち、国譲りによって新たな時代が始まる。そして、天孫降臨から神武天皇の即位へと続くこの壮大な叙事詩は、「日本とは何か?」という問いに対する答えを私たちに投げかけています。
この物語を通じて、日本神話の奥深さを感じ、神々が遺したメッセージに耳を傾けていただければ幸いです。
さあ、神々が紡いだ創世の物語の扉を開きましょう。

第一話 日本神様の誕生
遥か遠い昔、この世界にはまだ形もなく、すべてが混沌としていました。天も地もなく、ただどろりとした原初の海が広がるばかり。そこに、やがて清らかなものが軽やかに浮かび上がり、やがて天へと昇っていきました。こうして、最初の神々が誕生したのです。
これが日本の神話における最初の神、「別天神」と呼ばれる神々です。彼らは、目に見える形を持たず、ただ存在するだけの神聖な存在でした。その中でも、最も重要なのが天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)。この神は宇宙の中心に位置し、すべての神々の源とされています。
混沌から生まれた神々
別天神たちは、しばらくすると姿を隠し、次に現れたのが「神世七代」と呼ばれる神々でした。彼らの中でも特に重要なのがイザナギとイザナミ。この二柱の神こそ、日本の大地を創る運命を持つ神々です。
天上の神々は、イザナギとイザナミに「まだ形のないこの世界を整え、国を作りなさい」と命じました。そして二柱の神は、「天の浮橋」に立ち、「天沼矛」という神聖な矛を使って、混沌の海をかき混ぜました。矛の先から滴り落ちた雫が固まり、やがて最初の島「オノゴロ島」が生まれました。
イザナギとイザナミは、この島の上に降り立ち、ここを拠点に日本の国土を形作っていくことになります。しかし、彼らの物語は、ただの国生みでは終わりません。やがて二柱の神の間には愛が芽生え、多くの神々を生むことになりますが、それは同時に悲劇の始まりでもありました。

第二話 神々の愛と死、そして黄泉の国
国生みと神々の誕生
イザナギとイザナミは、オノゴロ島に降り立ち、夫婦の契りを交わしました。そして、彼らは天の神々の命に従い、次々と日本の国土を生み出していきます。最初に生まれたのは淡路島、そして四国、隠岐、九州、壱岐、対馬、佐渡、最後に大八洲・本州を生みました。こうして、日本の大地が誕生したのです。
しかし、国生みを終えた二柱の神は、さらに神々を生むことを決意します。海や川、山や森、風や火、あらゆる自然を司る神々が次々と誕生しました。しかし、その中で悲劇の始まりとなる神が生まれてしまったのです。
悲劇の火神とイザナミの死
イザナミが最後に生んだのは、「火の神・(軻遇突智)」でした。しかし、この神を生んだ瞬間、イザナミの身体は火傷を負い、深い傷を負ってしまいます。彼女の命は次第に衰え、ついには死の国・黄泉の国へと旅立ってしまいました。
愛する妻を失ったイザナギは、嘆き悲しみました。そして怒りに震え、カグツチを斬り捨てます。すると、その血からまた新たな神々が誕生しました。神々の世界では、死ですら新たな命を生み出すのです。
しかし、イザナギの心は晴れません。どうしてもイザナミを取り戻したい。その思いが彼を黄泉の国へと向かわせることになります。
黄泉の国への旅
イザナギは、暗く陰鬱な黄泉の国へと足を踏み入れました。そこには生前の美しい姿のままのイザナミがいることを期待していました。しかし、彼が目にしたのは、すでに変わり果てたイザナミの姿でした。
「どうか、もう一度戻ってきてくれ」
イザナギは必死に訴えます。しかし、イザナミはこう答えました。
「私はすでに黄泉の食べ物を口にしてしまった。この世界の掟により、もう戻ることはできないの」
それでもイザナギは諦めません。すると、イザナミは最後の望みとしてこう言いました。
「少し待っていて。黄泉の神に頼んでみるから。その間、決して私の姿を見てはいけません」
イザナギは待ちました。しかし、長い時間が経ち、彼の心に疑念が生じます。「本当に戻ってくるのか?」不安に駆られた彼は、ついに火を灯し、イザナミの姿を見てしまったのです。
そこにあったのは、腐敗し、醜悪な姿に変わり果てたイザナミでした。
黄泉の追跡と夫婦の決別
自らの姿を見られたことに激怒したイザナミは、黄泉の恐ろしい鬼たちを放ち、イザナギを追わせます。イザナギは必死に逃げ、黄泉の国の入り口である「黄泉比良坂)」まで辿り着くと、大きな岩を入口に塞ぎました。
「さらばだ、イザナミ!」
イザナギは叫びます。
岩の向こうから、イザナミの怒りの声が響きました。
「あなたを愛していたのに...。ならば、私はこの世の人間を一日に千人殺す!」
これに対し、イザナギは毅然と答えました。
「ならば私は、一日に千五百人の命を生み出そう!」
こうして、黄泉の国の入り口は閉ざされ、二柱の神の夫婦関係は終わりを迎えました。この出来事が、「人が死ぬ運命」と「新たな命が生まれる仕組み」の起源になったとされています。

第三話 三貴神と神々の新たな時代
禊から生まれる神々
黄泉の国から逃げ帰ったイザナギは、恐ろしく穢れた気を感じました。そこで彼は「禊」を行うため、筑紫(現在の九州)の日向の川へ向かい、身を清めることにしました。
イザナギが衣を脱ぎ捨てると、その一つ一つから新たな神々が誕生しました。そして、彼が川の中に入り、顔を洗ったとき——そこから最も重要な三柱の神が生まれたのです。
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- 左目を洗うと、生まれたのは
- 天照大神(あまてらすおおみかみ):光を司る太陽の神
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- 右目を洗うと、生まれたのは
- 月読命:夜を統べる月の神
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- 鼻を洗うと、生まれたのは
- 須佐之男命(すさのおのみこと):海と嵐を司る荒ぶる神
イザナギはこの三柱の神を見て、特に天照大神に大きな期待を抱き、「お前は高天原(たかまがはら)、つまり天の世界を治めよ」と命じました。月読命には夜の世界を、須佐之男命には海の世界を統べるようにと、それぞれの役割を与えました。
しかし、この決定が後に大きな波乱を生むことになるのです。
須佐之男命の乱暴と天照大神の怒り
須佐之男命は、自分が治めるべき海を顧みず、泣き叫びながら母であるイザナミのもとへ行こうとしました。そのあまりの激しさに、地上の国々は荒れ果て、山は崩れ、川は氾濫しました。
イザナギはこれを見て激怒し、須佐之男命を追放します。しかし須佐之男命は、追放される前に天の国・高天原(たかまがはら)にいる天照大神に会いたいと思いました。
「私に悪意はない。ただ姉上に別れの挨拶をしたいだけだ」
そう言って天に昇る須佐之男命。しかし、彼が高天原に足を踏み入れると、あまりの気迫に天の神々は恐れをなし、天照大神ですら警戒心を抱きました。
「私は何も悪事を企むつもりはない。ただ、正々堂々と勝負しよう」
そうして始まったのが、天照大神と須佐之男命の「誓約」です。
誓約と神々の誕生
天照大神と須佐之男命は、それぞれの持ち物から神を生むことで「どちらが清らかであるか」を競うことにしました。
- 天照大神は、須佐之男命の剣をかみ砕き、吹き出すと三柱の女神が生まれました。
- 須佐之男命は、天照大神の勾玉をかみ砕き、吹き出すと五柱の男神が生まれました。
この結果から、「自分の剣から生まれた女神は清らかであり、したがって自分の心も清らかだ」と須佐之男命は主張しました。天照大神も一応納得し、須佐之男命を歓迎することにしました。
しかし、この誓約の後、須佐之男命は高天原で次第に暴れ始めます。
天岩戸と世界の闇
須佐之男命は勝負に勝った勢いのまま、無茶苦茶なことをし始めました。
- 田んぼを荒らし、畑を壊す
- 神々の神殿を破壊する
- 天照大神が大切にしていた機織り所に馬の皮を投げ込む
この最後の出来事に激怒した天照大神は、「こんな乱暴な弟とはもう一緒にいられない」と考え、天岩戸と呼ばれる大きな岩の洞窟に閉じこもってしまいました。
天照大神が姿を消すと、太陽がなくなり、世界は真っ暗になりました。作物は育たず、寒さが増し、神々も人々も困り果てました。
「どうにかして、天照大神を外に出さねば...」
高天原の神々は集まり、知恵を絞ります。そして、最高の知恵者である思金神が策を立てました。
天照大神を呼び戻す作戦
神々は天岩戸の前で大騒ぎを始めました。特に、芸の神である天宇受売命は、岩の前で奇妙な踊りを踊り、神々を笑わせました。
「なぜそんなに楽しそうなの?」
洞窟の奥から天照大神が気になって声をかけます。
「あなたより美しい神が現れたのですよ!」
そう言って、神々は鏡を差し出しました。そこには、天照大神自身の美しい姿が映っていました。思わず顔を出した瞬間、待ち構えていた力持ちの神、天手力男神が、天岩戸を開け放ちました。
こうして、太陽が再び世界に戻ったのです。
須佐之男命の追放と試練
しかし、騒動を起こした須佐之男命には厳しい罰が与えられました。彼は高天原を追放され、地上の世界へと落とされたのです。
須佐之男命は地上で彷徨い、やがて「出雲の国」へと辿り着きます。ここで彼は、恐ろしい大蛇「八岐大蛇」と出会い、伝説の戦いを繰り広げることになります。

第四話 須佐之男命と八岐大蛇—伝説の剣の誕生
須佐之男命、地上へ降る
高天原を追放された須佐之男命は、荒々しく地上へと落とされました。行き場を失い、彷徨う彼が辿り着いたのは「出雲の国」でした。
須佐之男命は、そこに流れる清らかな川のほとりで、一組の老夫婦と美しい娘が泣いているのを見つけました。
「なぜ泣いているのだ?」
須佐之男命が尋ねると、老夫の足名椎と老妻の手名椎は、震えながらこう答えました。
「私たちには八人の娘がおりました。しかし、毎年、恐ろしい大蛇『八岐大蛇』が現れ、娘を一人ずつ奪っていったのです。今年もその時が来てしまい、最後に残った娘櫛名田比売が連れていかれるのです」
須佐之男命は、娘を一目見て、その美しさに心を奪われました。
「もし私がその大蛇を倒したら、娘を妻にくれるか?」
「もちろんでございます! どうか娘をお救いください!」
こうして須佐之男命は、八岐大蛇との決戦に挑むことになります。
八岐大蛇の恐ろしい姿
足名椎と手名椎から詳しく話を聞くと、八岐大蛇はその体が八つの頭と八つの尾を持ち、目はまるで燃え盛る炎のように赤く、体は山のように大きく、その長さは谷八つ分にも及ぶと言います。さらに、その体には苔や木が生え、まるで動く山のような異形の怪物でした。
「その化け物を倒すには策がいるな...」
須佐之男命は、足名椎と手名椎にこう命じました。
「最も強い酒を作り、それを八つの桶に分けて置いておけ」
二人は急いで言われた通りにし、須佐之男命は櫛名田比売を櫛に変え、髪に挿して安全を確保しました。
八岐大蛇との戦い
しばらくすると、大地が揺れ、恐ろしい咆哮とともに八岐大蛇が現れました。須佐之男命は身を潜め、大蛇の動きをじっと見守ります。
八岐大蛇は酒の匂いを嗅ぐと、その場で舌を出し、次々と桶に顔を突っ込んで酒を飲み始めました。八つの頭がそれぞれ桶の中の酒を飲み干すと、やがてその動きが鈍くなり、ついには完全に酔い潰れてしまいました。
「今だ!」
須佐之男命は、天の剣を振り上げ、八岐大蛇の一つ目の頭を切り落としました。血しぶきがあたりに飛び散る中、さらに次々と八つの首を切り落としていきます。
ついに最後の首を落とし、八岐大蛇は完全に沈黙しました。しかし、須佐之男命がその体を切り裂いていると、ある異変に気付きます。
「これは...剣か?」
八岐大蛇の尾を切り裂いたその中から、一振りの神々しい剣が現れたのです。それが後に「天叢雲剣」、またの名を「草薙剣」と呼ばれる、伝説の剣でした。
新たな道と試練
須佐之男命は、この剣を手にすると、出雲の国を治めることを決意しました。そして、櫛名田比売と結婚し、平和な暮らしを築いたのです。
しかし、彼の冒険はこれで終わりではありません。この剣が後に、日本の王となる「天皇家」に受け継がれる運命を持つことは、まだ誰も知りませんでした。

第五話 天孫降臨—地上を治める神々
天と地の狭間で起こる争い
須佐之男命が地上で出雲の国を築いた後、その子孫たちは豊かな国を発展させていきました。しかし、一方で天上の神々が住まう「高天原」では、新たな問題が持ち上がっていました。
地上の国、すなわち「葦原中国」は、須佐之男命の子孫が治めるようになったものの、彼らは強大な力を持ち、時に高天原に対しても反抗的な態度を見せるようになっていたのです。
「このままでは、天の秩序が乱れる」
天照大神は天上の神々を集め、地上の統治について話し合うことにしました。そして、ついにある決断が下されます。
「葦原中国を、天の神々の正しき支配のもとに置くべきである」
こうして、高天原からの「国譲り」の交渉が始まるのです。
国譲りの交渉—地上の王、大国主命
葦原中国を治めていたのは、須佐之男命の子孫であり、強大な力を持つ神、大国主命でした。彼は賢く、豊かな国を築き上げ、多くの民に慕われていました。
高天原の神々は、まず平和的な交渉を試みることにしました。そこで派遣されたのが天穂日命でした。しかし、大国主命に迎えられた天穂日命は、彼の人格に惚れ込み、なんとそのまま出雲に仕えてしまいます。
交渉は失敗。そこで、次に派遣されたのが建御雷神でした。彼は剣の神であり、武力をもって交渉に臨む覚悟を持っていました。
建御雷神は、大国主命にこう迫ります。
天照大神がこの地を統べるよう命じられた。お前はこの国を譲るのか、それとも戦うのか?」
大国主命は考えます。そして最終的に、戦いを避け、国を譲ることを決意しました。しかし彼は一つの条件を出しました。
「私は国を譲ろう。しかし、私の魂を祀る立派な神殿を建ててほしい」
この条件を天照大神は受け入れ、後に「出雲大社」として知られる神殿が建てられることになります。こうして、平和的に国譲りが完了しました。
天孫降臨—地上へ降り立つ神
国譲りが成立したことで、いよいよ高天原の神々は、天から「正しき支配者」を送り込むことになりました。その神こそが、天照大神の孫にあたる瓊瓊杵尊です。
天照大神は、彼にこう告げました。
「お前は、これより地上の国を治めることになる。天の神々の意志を伝え、民を導き、豊かな国を築くのだ」
こうして、瓊瓊杵尊は多くの神々を従えて、天から地上へ降り立ちました。この出来事を「天孫降臨」と呼びます。
彼が降り立ったのは、九州の日向の地(現在の宮崎県)でした。そこから、彼の統治が始まり、日本という国の基盤が築かれていきます。
しかし、彼の前には新たな試練が待ち受けていました。地上の神々との対立、そして「三種の神器」との出会い。

第六話 三種の神器と日本の王権の誕生
瓊瓊杵尊と三種の神器
天照大神の孫である瓊瓊杵尊は、高天原の意志を受け、葦原中国(地上世界)を治めるために降臨しました。このとき、彼は天照大神から特別な宝物を授かります。
それが後に「三種の神器」と呼ばれる日本の王権の証となる三つの神具でした。
- 八咫鏡:「天照大神の姿を映す神聖な鏡」
- 草薙剣:「須佐之男命が八岐大蛇を倒して得た剣」
- 八尺瓊勾玉:「神々の霊力を宿す勾玉」
天照大神は瓊瓊杵尊にこう告げます。
「この鏡を私と思い、大切に祀りなさい。これらの神器は、お前が地上を治める正当な証となる。」
この言葉が、のちに「天皇が三種の神器を継承することで正統な支配者となる」という伝統へと繋がっていくのです。
地上の試練—猿田彦神との出会い
瓊瓊杵尊が地上へ降りる途中、彼の前に猿田彦神(さるたひこのかみ)という神が現れました。
猿田彦神は長身で、まるで巨人のような姿をしており、鼻は高く、目は光り輝いていました。彼は「地上の道を守る神」として、天から降りてくる瓊瓊杵尊を出迎えました。
「お前はどこへ行くのか?」
猿田彦神は問いかけます。瓊瓊杵尊が「地上を治めるために降り立つ」と告げると、猿田彦神は納得し、彼を安全に導くことを約束しました。
こうして瓊瓊杵尊は、猿田彦神に守られながら、無事に日向の地(現在の宮崎県)へと降臨することになります。
木花咲耶姫との出会い—皇室の血脈の始まり
地上に降り立った瓊瓊杵尊は、ある美しい女性と出会います。その名は木花咲耶姫耶。彼女は桜の花のように美しい女神で、山の神である大山津見神の娘でした。
瓊瓊杵尊は一目で彼女に心を奪われ、求婚します。大山津見神は喜び、「ならば、姉の石長姫も一緒に娶ってほしい」と申し出ました。
しかし、瓊瓊杵尊は石長姫の容姿が醜かったため、彼女を拒んでしまいました。すると、大山津見神はこう告げました。
「木花咲耶姫は花のように儚い命をもたらす。石長姫は岩のように永遠の命を象徴する存在だったのだ。お前が石長姫を拒んだことで、お前の子孫は長くは生きられぬ運命となってしまった...」
この言葉の通り、瓊瓊杵尊の血を引く人間たちは、神々のような永遠の命を持たず、限られた寿命を持つことになりました。これが「なぜ人間は死ぬのか」という日本神話における重要なエピソードのひとつです。
瓊瓊杵尊の子孫—神武天皇へと続く血脈
瓊瓊杵尊と木花咲耶姫の間には火遠理命という子供が生まれました。彼の子孫がさらに代を重ね、やがて日本を統一する偉大な王が誕生します。
その名こそが神武天皇。
神武天皇は、日本の初代天皇とされる存在であり、天照大神の血を受け継ぐ王として、後に「大和の国(現在の奈良県)」へと進軍し、日本を統一することになります。
こうして、日本の王権の礎が築かれ、「天皇と三種の神器」という伝統が誕生したのです。

第七話 神武東征—大和の国を目指して
神武天皇の誕生—天孫の血を引く王
瓊瓊杵尊の子孫として生まれた神武天皇。彼は天照大神の血を受け継ぎ、天の神々の意志を継ぐ存在として、九州の日向(現在の宮崎県)で成長しました。
しかし、やがて彼は思うようになります。
「この地ではなく、もっと広大で豊かな国を築かねばならない。天の神々の意志を継ぐ者として、真の国を作るべきだ」
こうして、彼は兄たちと共に東へ向かい、「大和の国(現在の奈良県)」を目指す旅を始めました。これが後に「神武東征」と呼ばれる、日本統一の大いなる戦いの始まりでした。
苦難の旅—熊野の神々の試練
神武天皇とその軍勢は、海を越え、様々な地を渡りながら進んでいきました。
しかし、途中で彼らは熊野(現在の和歌山県)にて、強力な敵に遭遇します。地元の豪族や神々が立ちはだかり、神武の軍勢は苦戦しました。さらに、神々の怒りによる嵐や霧が立ち込め、軍は前に進むことができませんでした。
そのとき、神武天皇のもとに、一羽の美しい金色の霊鳥が舞い降りました。その光は神々しい輝きを放ち、霧を払い、敵の戦意を削ぎました。この鳥こそ、天照大神が遣わした八咫烏(やたがらす)でした。
「天の神々が我らを導いてくださっている!」
八咫烏の加護を受けた神武天皇の軍勢は勢いを取り戻し、敵を打ち破り、ついに熊野を越えて大和へと進軍しました。
大和の戦い—長髄彦との激闘
大和の地に入った神武天皇を待ち構えていたのは、強力な豪族「長髄彦」でした。彼はこの地を支配する強大な戦士であり、神武天皇の軍勢を「侵略者」とみなし、激しく抵抗しました。
最初の戦いでは、長髄彦の軍の圧倒的な戦力の前に、神武の軍勢は大敗してしまいます。原因は「太陽を背にして戦ったこと」でした。
「私は天照大神の子孫でありながら、太陽に背を向けて戦ってしまった...」
神武天皇は、この敗北を神の啓示と受け取りました。そして、戦いの方角を変え、太陽の光を味方につけるために迂回し、再び長髄彦に戦いを挑みました。
今度は太陽の光が神武天皇の軍勢を照らし、敵の目を眩ませました。さらに、八咫烏の導きによって地の利を得た彼らは、ついに長髄彦を討ち取り、大和の地を手に入れました。
日本統一—初代天皇の誕生
こうして、神武天皇は大和の地に都を築きました。これが日本の歴史における最初の都、「橿原宮」と呼ばれる場所です。
彼はここで即位し、正式に「初代天皇」となりました。そして、新たな国の名を「日本」と定めました。
「これより、この国を天の神々の意志に従い、正しく治めていく。」
こうして、日本という国の礎が築かれ、「天皇」の存在が確立されたのです。

第八話 日本の神々と天皇の系譜—未来への継承
神武天皇の統治と日本の国造り
大和の地を征服し、初代天皇となった神武天皇は、天の神々の意志を受け継ぎながら新たな国造りを進めました。彼の治世のもとで、人々は農耕を発展させ、神々を祀る文化が生まれました。
しかし、神武天皇は自身の役割を深く理解していました。
「我が使命は、神々の意志を受け継ぎ、この国を正しく治めることにある。そして、それは我一代で終わるものではない。」
こうして、日本という国は「天孫の血を受け継ぐ者によって治められる」という新たな秩序が築かれることになります。
天皇の血統と神々の継承
神武天皇の子孫たちは、代々日本の統治者として国を治めていきました。この天皇の系譜こそが「万世一系」と呼ばれる、日本の皇統の始まりです。
そして、代々の天皇は三種の神器を継承し続けました。
- 八咫鏡:天照大神の御魂を象徴し、皇位の正当性を示す。
- 草薙剣:武の力を司り、王権を守る。
- 八尺瓊勾玉:天孫の血を受け継ぐ証。
この三種の神器こそが、「天皇の正統性」を示すものであり、後に「日本の皇位継承の証」として現在に至るまで受け継がれています。
天皇と神々の祀り—伊勢神宮の成立
神武天皇の統治が始まってから数世代後、皇室の一族は新たな決断をしました。
「天照大神を祀る場所を作り、皇室の祖神として永遠に敬うべきである」
こうして生まれたのが、伊勢神宮です。
伊勢神宮には、天照大神の御神体とされる八咫鏡が祀られ、代々の天皇はこの神社を最も重要な聖地として敬い続けました。
「天皇は神々の子孫であり、国を治めることは神々の意志を継ぐこと」
この思想が、日本の伝統的な価値観として根付いていきます。
神話から歴史へ—古代日本の始まり
ここまでの物語は、日本神話として語られるものですが、やがて日本の歴史は「神話」から「現実の統治」へと移り変わっていきます。
神武天皇の血統は、日本列島全域に広がり、やがて大和朝廷が確立されます。さらに時代が進むと、律令制度が整備され、奈良・平安時代へと繋がっていきます。
こうして、日本神話に描かれた神々の物語は、日本という国家の礎となり、現代へと受け継がれていったのです。
エピローグ—日本創世の秘密とは
ここまでの物語を振り返ると、日本神話は単なる伝説ではなく、「日本という国がどのようにして誕生したのか」を伝える壮大な物語であることが分かります。
- 天と地のはじまり—神々の誕生
- イザナギ・イザナミの国造り—日本列島の創造
- 天照大神と須佐之男命の対立—神々の世界の秩序
- 天孫降臨と神武東征—日本の王権の誕生
- 三種の神器と天皇の血統—日本の統治の正統性
このように、日本の神話はすべて「神々の意志によって生まれた国であり、正しい支配者が継承する」という思想を根幹に持っています。
この物語が語り継がれてきたことこそが、「日本創世の秘密」の真髄なのです。

第九話 日本神話と現代—神々の遺したもの
神話は過去のものではない—現代に息づく神々の教え
日本神話は、はるか昔の物語ですが、それは単なる伝説ではなく、今もなお私たちの暮らしや文化に深く影響を与え続けています。
- 「天皇」の存在は、天孫降臨の神話から続く「万世一系」の考え方に基づいている。
- 「伊勢神宮」や「出雲大社」は、今も日本の最も重要な神社として、人々が神々を敬い続けている。
- 「三種の神器」は、現在も皇位継承の証として存在し、日本の統治の正統性を象徴している。
- 「八咫烏」は、日本サッカー協会のシンボルとして使用され、導きの神の象徴として崇められている。
このように、日本神話は現代の日本の精神や文化の奥深くに根付いているのです。
神々の教え—日本人の精神に刻まれた価値観
日本神話には、現代にも通じる多くの教訓や価値観が込められています。
- 調和と秩序を重んじる(和の精神)
- 天照大神と須佐之男命の対立と和解に象徴されるように、日本神話は「争いの中から調和を見出す」ことの大切さを語っています。
- これは現代の日本社会における「和を尊ぶ文化」に繋がっています。
- 努力と試練の克服(開拓者精神)
- イザナギとイザナミの国造り、神武天皇の東征など、日本神話には多くの「困難を乗り越えて道を切り拓く物語」があります。
- これは「忍耐強く努力し、新たな道を開く」という日本人の精神に深く根付いています。
- 自然との共生(八百万の神)
- 日本神話には「山の神、海の神、川の神」といった自然の神々が数多く登場します。
- これは現代の「自然を大切にする心」や「神社や祭りで自然を敬う文化」へと繋がっています。
神話が息づく場所—日本各地に残る神々の足跡
日本神話に登場する神々は、現代の地名や神社の由来としても残っています。
- 伊勢神宮(天照大神を祀る): 皇室と深い関係を持ち、日本の中心的な神社。
- 出雲大社(大国主命を祀る): 縁結びの神として有名。
- 高千穂(天孫降臨の地): 瓊瓊杵尊が降り立ったとされる場所。
- 橿原神宮(神武天皇を祀る): 日本の初代天皇が即位した地。
- 熊野三山(八咫烏が導いた地): 神武天皇が試練を乗り越えた場所。
これらの神話ゆかりの地を訪れることは、日本のルーツを感じる旅でもあります。
神話と未来—神々の物語を受け継ぐ私たち
日本神話は、過去のものではなく今も生き続ける文化の一部です。そして、これからの未来においても、神々の物語は語り継がれ、新たな形で受け継がれていくでしょう。
「神話を知ることは、日本の精神を知ること」
この物語を通じて、日本の神々がどのように国を創り、人々の心に影響を与え、今に至るまで受け継がれているのかを感じていただけたなら幸いです。
私たちが生きるこの国は、遥か昔の神々が築いたものであり、彼らの意志は今も私たちの心の中に息づいています。
そして、これからの未来を創るのは、私たち自身なのです。
エンディング—日本創世の秘密とは何だったのか?
「日本創世の秘密」とは何か?
それは、日本という国が、ただの歴史の積み重ねではなく、神々の物語と共に生まれ、育まれ、今も続いているということです。
私たちは、神々の意思を受け継ぐ存在として、未来へとこの物語を紡いでいくのかもしれません。
「この国は、神々と共にある。」

第十話 日本神話の謎—封印された神々と失われた物語
封印された神々—なぜ彼らの物語は語られなくなったのか?
日本神話には、よく知られている神々の物語とは別に、ほとんど語られることのない神々が存在します。その中には、「意図的に封印された」とも考えられる神々もいます。
それはなぜなのか? どのような理由で彼らの物語は歴史から消えたのか?
この最終話では、日本神話に秘められた「封印された神々と消えた物語」に迫ります。
1. 月読命—なぜ彼の物語は少ないのか?
日本神話では、天照大神(太陽の神)と須佐之男命(嵐の神)の物語は多く語られる一方で、「月読命」の話はほとんど残されていません。
彼は三貴神(天照・月読・須佐之男)の一柱として、夜を統べる神とされています。しかし、彼に関する神話はほぼ皆無であり、わずかに「保食神(うけもちのかみ)を殺した」というエピソードが伝わるのみです。
これはなぜなのか?
一説には、「月読命の神話は、意図的に削除された可能性がある」と言われています。
- 月読命は「夜の神」であり、陰の力を持つ存在だったため、太陽信仰を重んじる朝廷によって影を薄くされた。
- 月の神は「死や黄泉の国」との関連が強く、神話に組み込むことを避けた。
- 実は天照大神と対立する存在だったが、その関係が後世に封印された。
これらの説が、月読命の神話がほとんど語られない理由として考えられています。
2. 饒速日命—神武天皇以前の王はどこへ消えたのか?
神武天皇が日本を統一する前、すでに大和の地には強大な王がいたと言われています。その王の名は饒速日命。
彼は、天孫降臨よりも前に「天から降りた」とされる神であり、大和の地を支配していた長髄彦とともに統治をしていたと伝わっています。
しかし、神武天皇が東征してきたとき、饒速日命は突然、神武天皇に忠誠を誓い、長髄彦を裏切ります。
これはなぜなのか?
- 饒速日命はもともと「別の天孫」として降臨した神であり、神武天皇とは異なる血統だった可能性がある。
- 古い支配者を正当化するために、神武天皇の伝説に統合された。
- もともと「日本の初代王」として語られるべき存在だったが、天皇家の正統性を強調するために消された。
こうした理由から、饒速日命の伝説は徐々に語られなくなったのかもしれません。
3. 大国主命—本当に国を「譲った」のか?
出雲の国を治めていた大国主命は、天照大神の使者との交渉の末、平和的に国を譲ったとされています。
しかし、本当にそうだったのか?
- 実際には「武力による征服」があったが、後の時代に「国譲り」として美化されたのではないか?
- 大国主命はもともと出雲の王として広く崇拝されており、その影響を抑えるために「和解した」とされたのではないか?
- 国譲りの後、大国主命が「見えない神」として封印されたことは、彼の勢力が抑圧された証拠なのではないか?
出雲大社が天皇家とは異なる独自の祭祀を行っている点も、この疑問を深める要因となっています。
4. 日本神話の原型—異なる神話が統合された可能性
実は、現在の日本神話は、もともと異なる地方の伝説が統合されて作られたという説があります。
- 九州の天孫系神話(天照大神・瓊瓊杵尊・神武天皇)
- 出雲の神話(大国主命と国譲り)
- 大和の土着神話(饒速日命・長髄彦)
これらの神話が統合され、現在の『古事記』『日本書紀』としてまとめられた可能性が高いのです。
つまり、日本神話は、古代の権力者たちが「自分たちの正当性を主張するために編纂した」可能性があるのです。
神話の真実—私たちが知るべきこと
日本神話は、単なる創作ではなく、古代の歴史を象徴的に語ったものであると考えられます。しかし、その中には「消された神々」「隠された歴史」があることもまた事実です。
この物語を通じて、「日本創世の秘密」とは、神々の物語の中に、私たちのルーツを知る鍵が隠されているということを伝えたかったのです。
エピローグ—日本神話のこれから
日本神話は、ただの過去の話ではなく、現代にも息づき、これからの未来にも影響を与え続けるでしょう。
神話は時代とともに形を変え、語り継がれるものです。
これを読んでくださったあなたが、「日本神話にはまだ知られざる秘密があるのではないか?」と考えてくださったなら、この物語の目的は果たされたと言えます。
「神々の遺した物語を、これからも語り継いでいこう。」
「日本創世の秘密」完結
番外編予告:日本神話の知られざるエピソード
このシリーズでは、日本神話の主要な流れを描いてきましたが、まだまだ語り尽くせない神話がたくさんあります。
次回の番外編では、「隠された神々と未解明の神話」に焦点を当て、さらなる日本神話の謎に迫ります。
- 神々の血筋の秘密—天照大神と須佐之男命の意外な関係
- 封印された神々—天香山命、級長津彦命とは何者か?
- 日本神話と世界神話の共通点—天孫降臨はどこから来たのか?
「日本創世の秘密」はまだ終わらない。
次回、日本創世の秘密・番外編「隠された歴史と神話の謎に迫る」でお会いしましょう!